甘い旋律で狂わせて
薫さんは少し首を傾け、静かに言う。


「永都が賞を獲っていく頃にはね、あの二人はほとんど話さなくなったの。永都は純粋に、自分が頑張ってネオの夢を叶えたいって思っていたけれど……。ネオは家にほとんど帰らなくなってね、自分から私たち家族と距離を置いていたから。

母も……あれから永都をひどく溺愛するようになった。ネオのことで思い悩むことに、疲れたのかもしれない。

賞を獲って、光輝く表舞台に立つ永都のことを、とても誇りに思ってたみたいよ。ネオもそんな母の雰囲気を察して、家に帰らなくなったんでしょうね」



そんな薫さんの言葉に、胸がひどく苦しくなった。





ネオは、どんなふうに


光輝く永都先生を見ていたんだろう……。




表舞台に立ち、母親に溺愛されていく兄の姿を


どんなふうに見ていたんだろう……。

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