甘い旋律で狂わせて
あたしはいつか、ネオに尋ねた。


『どうして、もっと高みを目指さないの?』



ネオのピアノを聴いて、アマチュアの域を超えていると思ったから。


バーや船上のような光の当たらない場所で弾いているべきじゃないと思ったから。



だけどそんなあたしに、ネオは言った。



『一部の音楽好きのために弾くことだけが、音楽のすべてじゃないだろう?』


意志の強い瞳が、真っ直ぐにあたしに響いた。

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