甘い旋律で狂わせて
「花音、言ってみろよ。本当の自分の気持ち」



自分の愚かさに、吐き気がした。



これほどまでに、自分は冷たく愚かな人間だったのかと思うと

ひどく自分が憎くなった。



「今でもアイツを、想ってるんだろう?」



嘲るような声だった。

だけど、虚しさが籠った声だった。



それは的確に、あたしの心の一番奥の感情に向かって響き

優しい嘘をつくことさえも、許さない。



そしてようやくあたしに向けられたその眼差しは


心さえ凍りつくほどに、すべてを諦めたように、哀しい色をしていた――……

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