甘い旋律で狂わせて
あたしも店内を見渡しながら、ゆっくりとイスに腰掛けた。


「いらっしゃいませ」


キョロキョロするあたしたちに声をかけてきたのは、爽やかな笑顔が印象的なイケメンバーテンダー。

ニコリとほほ笑みながら、カウンターテーブルにそっとロウソクの火を灯した。



「おススメは何?」


こういう場所に来慣れた遥が、薄いピンクのスプリングコートを脱ぎながら聞いた。



「季節のフルーツのシャンパンカクテルはいかがですか?」


袖を捲りあげながら言うバーテンダーに、遥は頷いた。


「じゃあ、それをお願い」

「あ、あたしも!」


あたしはそわそわしながらも、慌てて遥に同調した。


慣れた手つきでカクテルを作るバーテンダーを眺めながら、あたしはネオのことを思い出していた。


「どうしたのよ、ぼうっとして」


遥があたしの顔を覗きこんだ。

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