甘い旋律で狂わせて
「な、何もないよ」

「その“彼”のこと、探してるの?」


遥はニヤニヤしながら、手に持ったままの青いカードを見た。


「う、うん。ほら、すごく素敵な演奏だったから。彼の演奏が」

「ふ~ん。どんなイケメンか楽しみだわ」


意地悪な笑みを浮かべる遥に、あたしも苦笑した。




そうこうしているうちに、あたしたちの前に出されたのは、桃色の液体の入ったシャンパングラス。


季節のイチゴを使ったシャンパンカクテルだった。


その爽やかな口当たりを楽しみながら、遥はグラスを置いてバーテンダーに話しかけた。


「ねぇ、お兄さん。ここでピアノ弾いてるイケメンの演奏を聴きに来たんだけど。今日は?」


遥は誰もいないグランドピアノを指さしながら問いかける。


「ちょっ、遥!そんな聞かなくても別に…」

「いいじゃない、花音。あんたは彼の演奏を聴きにきたんでしょ?」

「そ、そうだけど…」


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