甘い旋律で狂わせて
思ったことを即行動に移す遥に、あたしはいつも振り回されている。

でも、そんな素直でまっすぐなところが羨ましかったりもする。


「ああ。もしかして、“ネオ”のことですか?」


あたしたちのやりとりを眺めながら、バーテンダーは静かに言った。


「そ、そう!ネオ!」


あたしは思わず声を大きくした。



すると、バーテンダーはクスッと微笑んで、あたしたちの後ろを指さした。



「彼なら、そこに」



その指差すほうに体を向けると……




「あっ……!」




あたしの視線の先には、いつのまにかグランドピアノのそばに立つ華奢な人影があった。


俯けば顔が見えないほどの長いサラサラの黒髪に

ドクンと、心臓がとび跳ねるほどに高鳴った。



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