甘い旋律で狂わせて
店内のBGMが止まり、ネオが鍵盤にそっと手を置いた瞬間……



流れ出したピアノの音色が、柔らかくフロアーを包んだ。


落ち着いたバーの雰囲気に合った、しっとりとしたメロディー。


グラスを傾けると鳴る氷の音に、呼応するようにその音色が優しく響く。



まるで、ピアノがシャンソンを歌っているよう……。



美しいメロディーに耳を傾けながら、あたしはずっとネオを眺めていた。


ひとつひとつの仕草が、あまりに妖艶で色っぽかった。



時折薄く目を開け、苦しげな表情をする。


その彫刻のような美しい横顔に、あたしはいつのまにか瞳をそらせないでいた。




永都先生じゃない。

それはわかっているのに。


どうしても、重ねてしまうんだ……。


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