甘い旋律で狂わせて
やがて数曲が終わり、拍手がフロアーに鳴り響くころ。

遥は慌てた様子であたしに耳打ちした。


「花音、ごめん。カレシから呼び出されたから、今日は先帰ってもいい?」


ケータイのメールをあたしに見せながら、遥はゴメンと両手を顔の前で合わせた。


「うん、いいよ。あたし、もう少し聴いてから帰るね。」


急いで店を出る遥を眺めながら、あたしはグラスの残りを一気に飲み干した。



遥はサバサバしてるけど、すごく女らしい。


友達との時間も楽しみながらも、やっぱりカレシを優先させている。


恋愛を大切にしながら、毎日活き活きと過ごしてる感じがする。


そんな遥が、羨ましい……。



あたしは遥の後ろ姿を見ながら、大きく溜息をついた。



そしてピアノの方へ振り返ろうとしたその時だった。
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