甘い旋律で狂わせて
「来てくれたんだね」


耳に大きく聞こえたその声に、あたしの体はとび跳ねた。

 

振り向けば

ピアノを弾いていたはずのネオが、あたしのすぐ前まで来て立っていて……。



「ネ、ネオ……さん……」


あたしは驚くあまり、大声で叫んでしまった。


そんなあたしの様子を見ながら、ネオはクスクスと笑った。



「そんな驚かないでよ」


目を細めて笑いながら、ネオはあたしの隣に腰かけた。


ピアノの方を振り返れば、もう違う誰かがクラシックを弾いていた。



本当に、いつのまに?



あたしが来てること、気づいてたのかな……。




不思議そうな顔で横を見ると、ネオは苦しそうにネクタイを外した。


不覚にも、その色気を含んだ仕草にドキリとしてしまった。


近くで見れば見るほどに、ネオの横顔は美しかった。

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