甘い旋律で狂わせて
「とってもいい演奏だったよ、ネオ」


「それはよかった。ありがとう」



花束を抱えながら、ネオは涼しげに笑った。



心地よい風になびくネオの髪が、サラサラと揺れる。


そのたびにネオの優しい眼差しがあたしを包んだ。



「あんなに優しいカノンを聴いたのは、初めてだよ」



そう言ってほほ笑んでみせると



「花音を想って弾いたからだろうな。あの曲は、キミにぴったりだから」



ネオはクスッと笑いながら、そう言った。



ネオの笑顔は、夕暮れに照らされて穏やかに赤く染まっていた。

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