甘い旋律で狂わせて
「どうぞ」


静かにあたしの前に差し出されたのは、オレンジ色の鮮やかなカクテル。


黄色と朱色が混じったそれは、まるで港の夕景を思わせる。


「いただきます」


口をつけてみると、柑橘の甘酸っぱくフルーティな味が口いっぱいに広がった。


隣を見ると、ネオは差し出された黄金色のマティニーを喉を鳴らしながら飲んでいる。


喉が蠢く白い首筋に、自分でも不思議なくらいに魅了された。


どこか官能的なネオの横顔に、あたしは目をそらしながら話しかけた。


「あのっ……ネオさんは、いつもここで弾いてらっしゃるんですか?」


あたしの突然の問いかけに、ネオはグラスを置いて首を横に振った。


「ネオでいいよ」

「えっ?」

「僕のこと、ネオって呼んで。花音」


甘い微笑を浮かべてあたしの名を呼んだネオに、またドクンと鼓動が高鳴った。
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