甘い旋律で狂わせて

「大切にしたいんだ。たった一人の母親だから。永都がくれた命だから、大切に生きていきたいと思う」



ネオは呟くようにそう言って

そっと、あたしの手をとった。



「いつ死ぬかわからない。いつ誰かを失うかわからない。だけど生きていくしかないならば、僕は優しく生きていきたい」



ネオの眼差しは、とても柔らかで

そして、優しかった。



ギュッと手を握り合い

そして、少しだけ葉の色づく並木道を


二人、ゆっくりと歩き出した。




「花音。一緒に歩いて行こう」



歩幅を合わせて

手と手を握って



もう、離れることのないように


二人並んで、歩き出す。

< 592 / 593 >

この作品をシェア

pagetop