甘い旋律で狂わせて
「そう」

クスッと笑い、ネオはゆっくりとドアを開けた。


腕を組みながら、出ていくあたしをじっと見つめるネオに、なぜだか高鳴る鼓動は収まることなく鳴り響いていた。



寝室を出てすぐにリビングがあった。


薄暗い照明の中、部屋の中央に置かれた大きなグランドピアノが目に入る。



そのピアノに、昨日のネオの演奏を思い出した。



あの音色が、今でも耳に残ってる。




「花音」



ぼうっとするあたしの名を、ネオは突然呼びかけた。


ゆっくりとあたしに歩み寄り、体を曲げて頭ひとつ低いあたしの背に視線を合わせる。



「また、聴きにきてくれる?」



優しい声なのに、威圧ともとれるような言葉の厚み。


その美しい顔立ちに惑わされるように、あたしは思わず小さく頷いてしまった。

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