秘蜜の恋人。~先生×生徒~
「おやすみなさい」
「おっ、おやすみなさいっ」
つっかえながら早口で言うと、先生はくすりと笑って出ていった。
「…………ふぅ」
なんか、疲れた。
先生が何もしてこなかったのはホッとしたけど、なんか今日は色々ありすぎて大変だった。
もう寝よう……と、ベッドに潜りこみ、横になる。
と、ふいに、なんだか泣きたいような気持ちが込み上げてきた。
な、何コレ。
今日のあたし、なんかすごい泣き虫だ。
おかしい。
泣くようなことなんて何も……。
…………あ。
ひとつだけ、思いあたること。
それは、
「はじめて……だったんだ」
誰かと一緒に夕飯を食べたり、
食器を洗ったり、
テレビみたり。
家では、そんなこと、一切しなかった。
お母さんは口を開けば愚痴ばかりだったし、あたしはあたしで、お母さんと一緒にいるのが怖くて嫌でしかたなかったから、いつも自分の部屋に逃げ込んでいた。
だから、だからこんなに、泣けてくるんだ。
とても、楽しかったから。
そう思うと、布団の中が突然冷たくなった気がした。
もし、これが夢だったら。
いや、そんなことはあるはずないのだけど、寝てから目を覚ましたら、小学生のころの自分に戻っている……なんてことは。
あるわけないのに、どうしようもなく不安になってきた。
それはきっと、お化けを怖がる子供と同じ。
たった一晩でも、今は一人でいたくない。