+チック、

「あのね・・・私ね・・・」

私は壁から背中を離して、真っ直ぐに彼の顔を見て手を伸ばした。

「私、私ずっと・・・」

あと少しで彼に手が触れそうな瞬間、私の身体全体を熱く熱を帯びたモノが包み込んだ。


『やっと見つけた。捜したよ』


その声はトンネルの中に響きわたり、私達の空間を引き裂いた。

目眩がした…

私を包み込む温もりはどんどんと冷えきった私の体に浸食してきた…

とても気持ち悪かった…


私は悲鳴を上げてその温もりを突き飛ばして、彼に抱きついた。

彼はその温もりを瞬時に打ち消す程に冷たかった。でも私はその方が安心できる。


『――!そこを離れるんだ!こっちに来い!!』


大声でそう名前を呼ばれて、頭を殴られた様だった。

「そんな風に私の名前を呼ばないで!!」

彼の胸に頭を埋めながら私はそう叫んだ。
その男の呼び方が間違っている訳ではない、それでも…

「―――さん・・・」

彼は私を戸惑いながらも優しくそう呼んでくれた。そう呼ばれた私は一層彼にぎゅっとすがりついた。彼の声以外は聞きたくなかった…

後ろからは私の事を呼ぶ男の怒声が響いていた。

私は賢明に耳を塞いだ。

それでも一つの言葉が矢のように私を貫いた。
『そんな人殺しが人を愛するはずないだろ!!』

人殺しが・・・

キツく耳を塞いだ私の中で男の言葉がグルグルと回っていた。

男は繰り返し私に彼は人殺しであると叫んで聞かせた。

顔を見なくても彼がとても苦しんでいるのは感じ取れる。

私は彼から顔と手を離して、振り返りながら叫んだ。


「彼が人を殺した理由も知らない癖に、勝手な事を言うな!!!!」


しかし男はその瞬間を見逃さなかった。
男は私の手を掴んで彼から引き離した…
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