だって、こんなにも君が好きだから。
翌日。
ドォン!
矢は、いつも通り中心に突き刺さっていた。
「紫乃さま、本調子ですね。」
昨日のあの子が、自分のことのように嬉しそうに話しかけてきた。
「ああ、まあな。」
「平良木くん、そろそろ来る頃ですかね。」
「ああ、そうかもな。」
「紫乃さま、あの…」
昨日から、決めていたことがある。
「なぁ、その紫乃さまってやめてくれないか。鬱陶しい。」
「え、あ…、ごめんなさ…」
「それから、その敬語も。」
ビクリ、と彼女は目を泳がせた。
「…紫乃、と呼んでくれ。」
「え…?」
「私は、お前が思っている程、大層な人間ではないからな。だから私も、お前を叶(カナエ)と呼ぶが、構わんな?」
「…はい!!」
「敬語。」
「あ、うん!!」
叶は、にっこりと極上の笑顔を浮かべた。
そんな彼女を見て、私も表情を緩める。
そして、もう一度弓を引いた。
なにも聞こえない。
見えない。
あるのは、真っ直ぐ前の的と私の鼓動。
狙い定め、指を離す…!
「紫っ乃ちゃぁぁぁんっ!がんばれー!!」
ドォン!!
「おぉー!!ど真ん中!さっすが俺の…」
「えぇい、五月蝿い黙れ!!」
矢は、綺麗に真ん中に刺さっていた。
◇Fin◇