だって、こんなにも君が好きだから。
「…紫っ乃ちゃぁんー!!」
ドォン!
私の意識の中に轟いてきた声に、的を狙った矢は中心から大きくずれた所に刺さった。
「惜しいっ!あー、でも今日もカッチョいーね!!」
毅然とした弓道場に、お茶らけた声が響く。
その相手を、私は知っていた。
「…また貴様か、平良木 龍(ヒララギ トオル)。」
「もー、龍くんでいいって言ったでしょー!?俺と紫乃ちゃんの仲じゃ…」
「帰れ。そして車にひかれてしまえ。」
「うっわー!!ひどいっ!けど癖になる突っぱね方ー!!もっと突っぱね…」
「えぇい五月蝿い!!射ぬかれたいか!」
「ああ、俺のハートはとっくに君に射抜かれて…」
…ドォン!
真っ直ぐに飛んだ矢は、狙った通り壁に突き刺さった。
平良木 龍の顔の真横に。
遠目から見てもわかるほど、平良木 龍の表情は凍りついていた。
「ふん。外したか。」
「ま…っ!?殺す気!?ねぇちょっとタンマっ!!」
「待たん。私は忙しい。大会が近いから、練習せねばならない。ひょっとしたら、今度は手元が狂って貴様を壁に張りつけることになるやもしれんが、構わんな?」
「しっ、失礼します!!」
平良木龍は、脱兎の如く弓道場から逃走した。
私はそれを眺め、再び的へ向けて弓を引く。