だって、こんなにも君が好きだから。
弓道着のまま廊下を歩けば、人々の注目の的になることもしばしばだ。
弓道着が珍しいのだろう。
これも慣れきっているので気にしない。
真っ直ぐ前を見て歩いていたときだった。
「…わっ!!…って、うわぁぁぁっ!?」
突然後ろから肩をガシッと掴まれた。
それを問答無用で腕を掴んで投げ飛ばしたら、その犯人は素で焦った声を上げて床に倒れ込む。
「…はぁ。」
その人物の近くに寄り、上から情けない姿を見下ろせば思わずため息が漏れた。
「また貴様か、平良木 龍。」
「へ、へへへへ…。いやぁ、紫乃ちゃんすげぇね。俺、超ビビっちゃったー。」
「いきなり貴様が肩を掴むからだ。」
「俺的には、きゃあっ、とかっていう女の子らしい反応を期待してたんだけどなぁ。まさか投げ飛ばされるとは。」
「すまなかったな。ご期待に沿えず、女子らしい反応が出来なくて。」
「いやいやぁ、そこもまた紫乃ちゃんの魅力というもので。」
冷たい床に寝そべり、ヘラヘラと笑うこの男にまたため息がつきたくなった。
まったく、なぜこのようなことになったのか。
私は、常に気高く孤高でならばならなかったのに。