だって、こんなにも君が好きだから。
我が藤宮家は、代々続く武士の一族だった。
明治に身分制度が廃止され、四民平等となった現在では名だけの士族の末裔だ。
しかしながら、道場を営む本家では幼少の頃からあらゆる武道を叩き込まれた。
もちろん勉学にも手を抜いたことなどない。
女だからと言って、弱くてはならん。
男に守られずとも、自身の力を付けよ。
強く、気高く、そして美しく。
誰に頼らずとも、孤高の存在となれ。
常に人の上に立て。
そんな父上の教育方針のせいもあり、私はこのような有り様だ。
生徒どころか教師陣にも一目置かれる存在となり、友人と呼べる者は1人とていない。
「もう私に構うな、平良木 龍。」
そう言い残し、背を向けて歩き出した。
「ねぇ、なんでそんなに頑ななの?」
背後からの声に、思わず足が止まる。
「もう少しさ、柔軟になろうよ。そんなに固くしてさ、楽しい?」
カァッと頬に熱が射した。
「確かに紫乃ちゃんカッコいいけど、みんなと同じ目線に居なきゃ友達も出来ないよ?」
…貴様に何がわかる。
「例えばさ、もっとニコニコするとか。その硬い口調を女の子らしくするとか。」
知ったような口をきくな。
「もっとさ、人に気を許…」
「…黙れ!!」
平良木 龍の言葉を遮り、素で声を張り上げた。
「貴様に何がわかる!!私はそのようなレベルの低い真似などせん!!そんなことまでして貴様みたいな、低俗な友人など欲したりしない!!見くびるな!」