みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
するとテーブルの上に両肘を置き、悠長にも手を組んだ彼はそこへ顎を乗せた。
「だってさ、」
ひと区切りされてじれったいが、その続きが気になる私は固唾を呑んで待つ。
「――だって面白いじゃん」
「……は?」
しかし、返ってきた答えの短絡さには、つい間の抜けた声を出してしまう。
そんな私を愉快そうに笑うものだから、その態度でイラッとしたのも事実だ。
「もっと言えば、叶が朱祢ちゃんにそこまで執着するのか気になるから」
“もちろん、朱祢ちゃんと友達以上にはなりたいと思ったのが前提だけどね”
こう加えて言いきった通り、後者は明らかな社交辞令だろう。
何よりも本質からワザと逸れた話をするあたり、さすがひとクセある人物だ。
「何が仰りたいのですか?」
――結局のところ、これを私に直接言わせたかったのだから。
「秘密を知ってるって言ったら、どうする?」
「フフッ、秘密ですか?
それはぜひともお聞かせ願いたいですわ」
嘘っぱちに破顔して彼を見つめて探っていると、隙をついて頬にキスされる。
「隙あり」
その刹那、自席へとスムーズに戻った里村社長の発言で思わず眉根を寄せた。
「……これは約束にはございませんでしたよね?」
「あれ、意外」
「それはこちらが言うべき台詞です」
悪びれた素振りもない彼に呆れたような声色を出せば、くつくつと笑っている。