みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


そこで今日のランチは、オフィスを出て会社近くのカフェへ赴くことに。


オフィス街に建つ全国展開のその店は、仕事や勉強をする熱心な人でほぼ満員だった。


ちなみに秘書課の休憩は、課内に残っている者での交代制としていた。


特にトラブルがなければ、大抵13時過ぎには皆がランチにありつける。


すなわち今日は、問題うんぬんが多発したわけで。落ち着きを見せた頃、先輩方に先の休憩を譲った。


こうして下っ端の私は、一般よりも随分ズレた時間での休憩となったのだ。


常々、周囲との関わりは控えていても、業務に関しての気遣いや努力は惜しまない。


また秘書課の人々は案外、タフで野心家。ある種、他部署より人間関係にも悩まずに済んだのも奏功した。


楓を除いた社内の人間と距離を置いた日々。――これは、正しかったと思っている。


ただ私が秘書課に配属されたのは正解だったのか、と今も人事担当者に質したくて仕方ない。


すべての答えが出る頃、……果たして、良い方へと変わっているのだろうか?



* * *


じりじりと焼けるように熱いアスファルトは、歩いていると体感温度を上昇させる。


ラップサンドとアイス・コーヒーで手早くランチを終えた私は、結局カフェでさして長居せずに社屋へ戻った。


「ただいま戻りました」


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