みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
「……私だって2人が好きで、ぶっちゃけ、……尊敬してる。
まもとな恋愛してきてないヤツからすれば、本気で2人が羨ましいよ。
――犠牲にしてでも守りたいものと出会うことってそう無いから。……ううん、滅多にないよ。
それに今さらだけど、伽耶さんはもちろん知ってるんでしょ?」
「あ、あ」
真面目な話をし始めたせいか些かうろたえた様子の楓に、私はにっこり笑う。
「ほら!アンタを認めて信頼してるから、今日も真っ先に連絡くれたんだよ。
――信ちゃんの一番大事な人が誰か、よく分かってくれてる素敵な妹さんだね」
「朱祢」
そこで彼の片頬に軽く触れると、さっきよりは顔色が良くなっていた。
「ほら大丈夫よ」
「な、に」
「私と晴とひまわりんっていう最強の応援団がついてるし」
「……朱祢だけ怖いよ」
「はあ?」
「男より男らしい」
「うーるーさーいー」
減らず口を叩くデカわんこの頬を抓れば、レンズ越しに非難の視線を向けてくる彼。
「――信ちゃんのとこ、これから行くんでしょ?」
タイミング窺ってもう一歩踏み込んだ話によって、触れている頬がびくりと震えた。
信ちゃんは重篤な状態でなかったとはいえ、自動車事故によって重傷を負っている。
煌さんいわく日本で治療をするのが望ましいが帰国できる状態ではないため、移動可能になるまで現地の病院で入院するそうだ。
「……怖かった」
「うん」
そこでポツリと紡がれた本音。その直後、力なく私の肩にしな垂れ掛かる楓に頷く。