みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
逢瀬、始まる。
眠る行為とは、生きてゆく上で欠かせないもの。そして一番のリラックスタイムである。
朝日をほんの少し感じながら、暖かいまどろみの中で何も考えずに眠りたくて。
昨日のコトを一刻も早く取り去りたい、…そんな考えが浅はかだったのだろうか。
「…ね。おい、」
「…うぅん、も、すこしぃ、」
朝の貴重な時間をギリギリまで眠れば、あとが大変だと分かっていても。これがまた、贅沢かつ至福のヒトトキで。
それをもう少し味わっていたいと、寝ぼけてシーツを被った私はゴロンと寝返りを打とうとしたが。
なぜだかそれが叶わず、むしろ背中にギュッと負荷が掛かったような感触は気のせいだろうか…?
薄っすら視界が開けてゆけば、ぼやけた視界が捉えたシルエットにより完全に眼を見開くこととなった。
「さすがに遅刻なんだけど」
「――ぎゃあああ!」
「うるせぇ、」
思いきり不快な声色で呟いたうえ、眉根を寄せている男の姿に驚嘆しても決して悪くないだろう。
いくらそれなりのオトナでも、こんな想像したくもないサプライズでは対処不能だ。
朝の清々しいお目覚めは一転して、自身の運のツキを呪う一日の始まりとなった…。