みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
適当にシャワーを浴び終えるとルームワンピで部屋へ戻った。洗い晒しの髪はクリップで束ね、首にはタオルを巻いている。
今度はキッチンに立つと、冷蔵庫の残り食材を見て親子丼を作ることにした。
適当なタイプながら削り節から出汁を取るのはお約束。まずは冷凍庫からご飯を取り出してレンジにかけた。
玉ねぎと鶏もも肉を出汁とともにフライパンで煮立たせる。これは専用鍋がなければフライパンで代用可、という料理人・晴の教えだ。
そこへ溶いた卵を回し入れ、およそ30秒後に火を止める。ご飯の上に盛り、最後に三つ葉と刻み海苔を散らして終わり。
その傍らで一番出汁の残りで作った醤油ベースのお吸い物も完成し、お椀に熱々のそれを注ぐ。
それぞれを持ってダイニングテーブルへ向かう。再び踵を返すと食器棚からひとつの瓶を取り出した。
ちなみに自他共に認める酒豪だが、普段は仕事を考えて飲まない。二日酔いで出勤なんて悪目立ちの元だ。
しかし、今日はそんなのお構いなし。大好きな徳島の芋焼酎と沸かしておいたお湯を、焼酎タンブラーへ割り入れる。
満足するだけ飲みまくって、何もかも分からなくなるくらい酔いつぶれよう。
その前に椅子に座る前にバッグからスマホを取り出し、素早くメールを打って送信完了。
これでようやくご飯にありつける。虚しい乾杯の声を室内に響かせると、グラスを少し傾けた。
お気に入り芋焼酎の芳醇な香りが喉を潤しているのに、どうしてか今日は美味くも何ともない。――この分だと酔えないだろう。