みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


そこで我に返った私は視線を落とし、フッと嘲笑する。


――約束なんて所詮、独りよがりの偽善だと。


ふらふらした女には天罰が下る。現にあかねさんを知り、後悔だけが取り巻いている今がその時だ。


親が名付けてくれたこの名前を厭う前に、早く立ち去ろう。


もう切り捨てられているけれど、それにあやかって逃げる時が少し早く訪れたと思えば報われる。


どのみち、卑怯な道を選んだ因果応報を受けるに過ぎないのだから……。


* * *


翌日、早くベッドに潜り込んだもののあまり眠れなかった私は5時頃に起きた。


心の疲れは身をやけに重く感じさせるが、負けん気だけで起き上がる。


いそいそキッチンへ向かう。簡単にトーストとサラダにヨーグルト、としっかり朝食を摂った。


その後は、気合いを入れるため丁寧にメイクを施す。ラストにお気に入りのサンローランのルージュで唇を色彩る。


ヘアはいつも通りに、崩れひとつないアップスタイルでまとめた。


< 204 / 255 >

この作品をシェア

pagetop