みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
そこで我に返った私は視線を落とし、フッと嘲笑する。
――約束なんて所詮、独りよがりの偽善だと。
ふらふらした女には天罰が下る。現にあかねさんを知り、後悔だけが取り巻いている今がその時だ。
親が名付けてくれたこの名前を厭う前に、早く立ち去ろう。
もう切り捨てられているけれど、それにあやかって逃げる時が少し早く訪れたと思えば報われる。
どのみち、卑怯な道を選んだ因果応報を受けるに過ぎないのだから……。
* * *
翌日、早くベッドに潜り込んだもののあまり眠れなかった私は5時頃に起きた。
心の疲れは身をやけに重く感じさせるが、負けん気だけで起き上がる。
いそいそキッチンへ向かう。簡単にトーストとサラダにヨーグルト、としっかり朝食を摂った。
その後は、気合いを入れるため丁寧にメイクを施す。ラストにお気に入りのサンローランのルージュで唇を色彩る。
ヘアはいつも通りに、崩れひとつないアップスタイルでまとめた。