みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
「真実を言ったまでです。……私は私らしく、」
「じゃあ、何を言えば良い?朱祢自身を愛してるって?」
「貴方の戯言なんて聞き飽き、んっ!」
フルフルと頭を振って答えたものの、震えた声は隠しきれなかった。薄墨色の瞳はそんな私の態度もお見通し。
強く両肩を掴まれ、言葉を封じるように降って来たキス。柔らかな唇を避けようとしても、荒々しい口づけから逃げられない。
何度も受け入れてきた唇。重ねるほど愛しさを覚える心。この男を好きな私がキスに逆らう術はもうないのだ。
「ふっ、ん、んっ」
舌をあっさり絡め取られ、くぐもった私の小さな声と瑞々しい音の響く資料室。
そんな空間を支配しているのは社長の唇。その先は許さないと口を固く閉じていたのに耳の後ろを撫でられ、ぞくりと泡立った瞬間に侵入を許してしまう。
逃げて逃げて抗おうとしても、勝手知ったる彼に容赦なく追い詰められる。
ふわふわとした感覚が包み始めた身体から力が抜け出した刹那、わざとリップノイズを立ててキスが終わった。
しっとり濡れた唇を手の甲でグッと拭い、荒くなった息を整える。
その間も向けられる眼差しがやけに扇情的に映るのは、本能的に求めているせいだろうか。