みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


別れを告げた日から1ヶ月ほどで、社長とチーフの計らいよって素早い退社に至った私。


もちろん父には会社を辞めることになった経緯をすべてを話した。


怒られても仕方ない行為をした私を、父は何も言わずに黙って聞いてくれて、そしてすべてを許してくれたのだ。


『これからは朱祢が朱祢らしく、自分の幸せを見つけて欲しい』と。


そのあとで楓や晴、怪我も多少回復して帰国した信ちゃんにすべてを打ち明けた。


黙っていたことに怒った晴から頬を叩かれたものの、最後は泣きながら抱き締めてくれた。


そんな私たちを見ていた楓はいつものような小言すらなく、優しい顔をした信ちゃんにずっと頭を撫でられていた。


離れても変わらないよ、と最後に3人が言ってくれた言葉は私の支え。同時にやっぱり彼らが大好きだ、と痛感させてもくれた。


こうしてやって来た場所で、仕事中心の毎日がめまぐるしく過ぎている。……それは日本と変わらないな、とフッと自嘲してしまう。


< 248 / 255 >

この作品をシェア

pagetop