みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
別れを告げた日から1ヶ月ほどで、社長とチーフの計らいよって素早い退社に至った私。
もちろん父には会社を辞めることになった経緯をすべてを話した。
怒られても仕方ない行為をした私を、父は何も言わずに黙って聞いてくれて、そしてすべてを許してくれたのだ。
『これからは朱祢が朱祢らしく、自分の幸せを見つけて欲しい』と。
そのあとで楓や晴、怪我も多少回復して帰国した信ちゃんにすべてを打ち明けた。
黙っていたことに怒った晴から頬を叩かれたものの、最後は泣きながら抱き締めてくれた。
そんな私たちを見ていた楓はいつものような小言すらなく、優しい顔をした信ちゃんにずっと頭を撫でられていた。
離れても変わらないよ、と最後に3人が言ってくれた言葉は私の支え。同時にやっぱり彼らが大好きだ、と痛感させてもくれた。
こうしてやって来た場所で、仕事中心の毎日がめまぐるしく過ぎている。……それは日本と変わらないな、とフッと自嘲してしまう。