みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
こうイク寸前で止められれば、男よりオンナの方が辛いのよ。…それを分かっていて甚振る男が恨めしい。
「意地張ると辛いよ?」
「しゃ、ちょう、ンッ」
“社長いい加減にして下さい”というより早く、片頬にそっと大きな手が添えられた。その刹那、また唇を塞がれてしまう。
下唇を弄ぶ仕草がまた卑猥な音として響き、動揺を見せてはダメだと思ったのも束の間。
「ふぅっ、んー…っ」
空いていた大きな片手でグッと胸を掴まれた。ゆえに情けないことに、ぬるりとした新たな温度が腔内を探った。
どれほど逃れようとしても、歯列をなぞって蠢くそれに絆されるから。ついに舌先は絡め取られ、妖しいリップノイズがさらに涙を誘う。
ただ唇から滴ってゆく液体に構えないほど、角度を変えては落とされるキスに酔いしれていた。
その往来で息も上がって来た頃、ツーと銀糸を引きながらようやく唇に訪れた解放感。
いつしか閉じていた目をうすらと開けた先で捉えた、濡れた唇を拭う彼の表情にまたドキリ。
「やっぱり、メガネ無い方がそそる」
「な、にを…んっ、」
かのフレーズの引用で目を丸くした私に、また嘘っぱちの微笑とともに潤いの止まないトコロへ差し込まれた指先。
「――今を楽しんだ方が得策じゃない?」
この熱を孕ませたのはそもそも誰よ?目の前の男の理不尽な態度を睨んでみたけど、悔しくも新たな刺激で身体は痺れるばかり。