みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


「愛してる」

「……よ、く、言うっ」

「じゃあ、朱祢の本音は?」


この1年ずっと泣けなかったのに、ただひと目見ただけで流れた涙。


どれだけ忘れようとしても叶わなかった想いが、はらり、はらりと溢れてくる。


コクンと頷いた私は素直なままに、ギュッと彼のスーツを掴むとその胸に縋りついていた。


「わ、たしも、ずっと、ずっと……愛してますよっ!」

「ハハ、合格!」

「……偉そうにっ!」

「社長だもん」

泣きながら彼の顔を睨んでいれば、唇にそっと優しいキスが落ちてくる。


何度も何度も角度を変えては、互いを確かめるようにキスを重ねていた。



弱虫な自分が大嫌いで、いつもそれを周囲に気づかれないようひっそり生きていた。


でも、そんな私を変えたのは貴方との夜の逢瀬だったの。



いつしか芽生えたみだりな感情は、時を経て互いの愛情の強さを教えてくれたね。


大好きだった姉の思いとともに、今度はふたりが幸せの道を共に辿っていけるようにと……。



 【みだりな逢瀬★終】


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