みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
お風呂後はニットワンピとお団子頭に、メイクはお肌と眉のみという姿でベッドに寝転んでいた。
流石に2時間ほど経つとお腹が減ってきた。そういえば、昨夜は社長のお伴で軽食だったんだと思い出す。
何だか作るのも面倒臭くて、今日くらいコンビニ食にするかとカーデを羽織った時。
平日の日中ともあり、ずっと静かだったスマホが着信を告げた。誰とも話したくない現在、スルーを決めたのに。
バッグの中で鳴り続けるその音は一向に止まず、溜め息を吐きながら取り出した。
見知らぬ番号表示に嫌な予感がしたものの、チッと舌打ちして画面をタッチする。
「…なにサボってんの?」
やはり手のひらに置いたスマホから聞こえる非難の声は、数時間前までベッドを共にした男だ。
「……、」
「聞こえてるでしょ?ウエストからヒップ」
「――ご用件は何でしょうか」
耳元へ素早く機器を押しつけ、言葉を遮るように丁重に返した私の負け。
「分かり易いね」
くすくすと楽しげに笑う通話の声に苛々させられ、眉根が寄ってしまう。
「ですから、一体」
「一週間後の21時――あのホテルのラウンジで待ってて」
「…はっ?」
「俺には呼ぶ権利があるでしょ?」
何も言えなくなった私を一笑して、「じゃあね」と通話は切られてしまった。