みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
この部署に居る方が全体カバーが出来るというのが、隙のない彼を此処に席を置く理由だとか。……私にはどうでも良いけど。
そして掃除を終えた頃、続々と秘書課の面々が揃い出す。お洒落な出で立ちの女性と挨拶を交わし、また今週も始まった。
仕事を終えると帰って、疲れた身体にムチ打ってご飯を作ると、缶ビールと共にそれを食べる。
お風呂タイムでは足のむくみを取り、ベッドで友人へメールを返信してから寝る。これが私の基本的なサイクルだ。
ただし、今週は泊りがけの出張がある。そのため早く帰れた月曜の夜に、軽く荷物を詰める必要があった。
そんな面倒な用意もあっさり終わって、バタバタ過ぎた翌日の火曜の夜。
さすがに仕事を残して行けないからと残業し、帰宅は22時をとうに過ぎていた。
――2日がかりでのご招待とか、……なんて面倒な出張に当たったのだろう?
今夜は作る気も起きず、帰り際にコンビニでおにぎりとプリンを調達してきた。
自宅でひとり、おにぎりのフィルムを剥がすのは虚しいと思いながらも、健康を考えて野菜ジュースをゲットした自分を笑う。
それらを手早く食べ終えて、今夜は一刻も早く眠りたいからシャワーだけで済ませた。
乾燥対策重視スキンケアを終えたあと、23時過ぎにはベッドに身を沈める。
その前に電源をONにしていた、家庭用のプラネタリウムが無機質な白い天井を星空へ変えてくれる。
……彼女が昔からずっと大好きだった、美しい夜空の世界へ静かに溶け込む。
ゆったり流れる幾重もの星を眺めつつも、考えてしまうのは社長のことだ。