みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
そんな社長のコトはどうでも良いとして。肝心の問題はここから――そう、残念なきっかけは其処で始まっていた。
曲線的なフォルムを描くビルの中へと進めば、重役専用とおぼしきエレベーターで最上階へ案内された。
フロアを歩きながらふと窓を眺めれば、そこから臨む景色が高層階ならではの絶景に思わず目を奪われる。
都内の温かみのないビルディングも場所を変えれば目新しいものに映ると思えた。
CK社の社長室へと通されると、そこで社長とはまた違った精悍な顔立ちをした男性に出会うこととなる。
「今日は、ご来社ありがとう」
「貴重なお時間を割いて頂き、」
「ハハッ、よく言うよ――高瀬川、久しぶりだな」
それこそが国内で名を馳せるCK社の若き2代目、里村 皇人(さとむら きみひと)氏。
「はい、ご無沙汰しています。先輩もお元気なようで」
「オマエよりは“穏やかで堅実”な毎日だ」
「それを言いますか、」
「さて、始めようか」
「先輩!」
まったく知らなかったけど…、何やら里村社長はウチの社長とお知合いなようで。
珍しく隣で“してやられている”顔をチラリ見ると、何だか嬉しくなってしまった。