LOVELY☆ドロップ
どれくらいの時間を、そうしてうずくまっていただろう。
涙はなんとか引っ込んでくれた。
洗面所に備え付けてある鏡と向かい合い、自分の顔を見れば――なんてひどい顔だろうか。
目はうさぎのように真っ赤だし、顔色はそれとは逆に真っ青だった。
だけど、そんなことを気になんてしていられない。
なんたってあたしは一刻も早くここから出て行かなければならないのだから。
あたしは水道の蛇口をひねって勢いよく水を出すと、冷たい水を引っかぶるように顔へふっかける。
顔を洗い直せば、心なしか目の赤みは引いたように思う。
どうせ、ここからすぐ出て行くんだ。
誰に見られてもいいか。
とりあえず、今は自分の容姿なんて気にしない。
気にするのはこれからやって来るだろうとてつもない不安だけで十分だ。
洗面所と台所を隔てている扉のドアノブを回すと、無機質な金属音がやけに大きく聞こえた。
扉を開ければ、あたしのすぐ目の前でバツの悪そうな表情をした彼が立っていた。
どうやらあたしの泣き声は外へ漏れていたらしい。彼は心配するような視線を投げかけてくる。
今、あたしの目の前にいるその人物は、『出て行け』とそう言った彼ではなく、昨日出会った潤さんがいたような気がした。
だけど、あたしはもう潤さんに頼りたいという気分にはなれなかった。