LOVELY☆ドロップ

これからは誰にも頼らずに生きていかなければならないのだ。

そう決意すると、体の横に垂れ下がっていた左手が自然と拳になる。


「朝ごはんの……」

「いりません、お世話になりました」


彼が言った話の続きはきっと、『朝ごはんの用意をするから』か。

もしくは『朝ごはんの用意ができた』かのどちらかだろう。


でも、もういい。

誰かに助けを求めようと手を伸ばしたって、最後は払い落とされるのなら、もうこれ以上惨(ミジ)めな思いはしたくない。


看病してくれたお礼を息継ぎもせずひと息に告げると、ひとつお辞儀をして洗面所へやってきた時と同じように大股で潤さんを追い越す。自分のポーチを引っ掴んだ。




……気持ち悪い。

胃がムカムカする。



何も食べていないのに、胃から胸に向かって何かが押し上げてくる。


今のあたしは、胃のムカつきを抑えるため、胸を押さえることで精一杯だ。

他のことには頭が回らない。


だからここがどの地域でどうやって社宅に戻ればいいかなんてことも考えられなかったし、正直どうでもいいと思っていた。

今は一刻も早くここを出ることが先決だ。

社宅に戻るということはここを出てから考えればいい。

ここから出ることはとても簡単だ。


なにせ、あたしにはとてつもない金額が入った茶封筒がある。


慶介から渡された、中絶するためのお金が!!


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