LOVELY☆ドロップ

「うん、もう取り消しはナシね。

さあ、手軽で必要なものだけを取りあえずカバンに詰めて。

後はもう少ししてから業者に頼もう」

彼は肩を鳴らしてそう言った。




――えっ!? ええっ!?

ぇぇええええええええええええええ?


一緒に住むって何ですか!?



もう決定事項なんですか?

あたしの拒否権なしですか!?



……ああ、あたし。潤さんにハメられました……。



――――――。

――――――――――。



その日の午前中。

あまりにもめまぐるしく出来事が動いた。

おかげであたしは放心状態――。


そんなあたしを尻目に、潤さんは、といえば――あたしを家に置くという恐ろしい内容以外はとても冷静だった。


対するあたしは潤さんの問いにただうなずいたり首を振ったりするだけだった。




「行ってきます!」

幼稚園の制服の青いワンピースを着た祈ちゃんは黄色い肩掛けカバンを小さな肩に吊るし、同じく黄色い帽子を被ってそう言うと、元気に車内から出た。

彼女が向かう先は『かなりあ幼稚園』。


並木道に沿って存在する小さな幼稚園はとても穏やかだ。

木々の枝から見え隠れする雀(スズメ)が数羽、チュンチュンと可愛らしく鳴くそのさえずりの中、柔らかな木漏れ日のシャワーを小さな背中に浴びて、彼女はスキップをしながら開いている水色の門の中に飛び込んでいく。


彼女の父親である潤さんはっていうと、あたしを車内に残し、幼稚園の中から出てきたほっそりした小柄で年配の、女性の先生と挨拶を交わしていた。


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