LOVELY☆ドロップ
潤さんにまんまとハメられた後、祈ちゃんが通う幼稚園にたどり着くまでの道路沿いにあるハンバーガーショップに入って車に持ち込むと3人で仲良く食べた。
ポロポロと食べ物を小さな口からこぼしながら、それでも話すことをやめない祈ちゃんのおかげで幼稚園が始まるギリギリの時間になったことは言うまでもない。
ふと、小柄なその女性先生と話している潤さんを見ると、かなりの身長差があるはずなのにあまり変わらないように見える。
それは彼が何度も頭を上げ下げしているからだ。
話している内容はわからないけれど、きっと遅刻寸前だったことを謝っているのだろう。
……そんな潤さんをよそに、祈ちゃんは同じ制服を着た女の子とはしゃいでいた。
その光景は今までのあたしには考えられないくらい、とてものどかなものだった。
そっと目を閉じると、穏やかな朝の日差しが心地いい。
気がつけば、あたしは車の中でうとうとしはじめていた。
しばらくの間、あたしの意識が行ったり来たりを繰り返していると、どこか遠くの方でドアが閉まる音と車のエンジン音が聞こえた。
心地いい揺れを感じながら、あたしはそのまま目を閉ざした。
――いったいどれくらいの時間をそうしていたのだろうか。
揺れが消えたのに気づいたあたしは、ふたたび目を開けた。
「あ、起こしちゃった? ごめんね」
この優しい声音はもう知っている。
潤さんのものだ。
あたしはすっかり彼の声を覚えてしまった。
それがおかしくて自然と口元が緩む。