LOVELY☆ドロップ
戻ってきたんだ……。
フロントガラスから外の景色を見たあたしは実感していた。
そんな中、いつの間に運転席から移動したのか、あたしがいる後部座席のドアを開けた彼が手を差し伸べてきた。
まるで、そうすることが当然だというような仕草で……。
正直、潤さんとどう接したらいいのかわかならい。
突き放されたと思えば、手を差し伸べてくれる。
孤独だと思い知らされた次の瞬間には一緒に暮らそうと言ってくれる。
……祈ちゃんにしてもそうだ。
とても懐いてくれている。
嬉しくないと言えば嘘になる。
だけど、どうしていいのかわからない。
だって、優しくしてくれるのはきっと今だけだ。
いつかはこの人たちの元を去らなければならない。
なにせ、あたしのお腹には赤ちゃんがいる。
やがてお腹が大きくなれば、いくら優しい彼らでも煩(ワズラ)わしいと思うはずだ。
その日までにどこかで働いて、収入源を得なければならない。
でも、お腹に赤ちゃんがいる手前、ハードな運動はできなくなるだろう。
妊婦でも雇ってくれる場所なんてあるんだろうか。
あたしはいったいどうしたらいいんだろう。
そんな思いを抱きながら、潤さんの差し出された手を借りて車から降りる。
あらためてマンション周辺の景色を眺めてみると、とても静かな空間だということに気づかされた。