LOVELY☆ドロップ
家庭を守るには金が必要だ。
四六時中家にいることはできない。
だからぼくは、美樹ちゃんに『給料を支払うからベビーシッター兼ハウスキーパーをしてほしい』と提案した。
そう言ったのはもちろん、彼女にあまり無理をさせたくはないという思いと、純粋に祈の面倒を見て欲しいと思ったからだ。
もちろん美樹ちゃんははじめ、そこまで世話になるわけには行かないとぼくの提案にはうなずかなかった。
『一緒にいてほしい』
そう言った祈の言葉であっさりと同意した。
悔しいことに、美樹ちゃんはぼくよりも祈の『お願い』にとても弱い。
「だいじょうぶ!! おねいちゃんはイノがまもるもん」
数日前の出来事を振り返り、祈に対して少しばかりのジェラシーを感じていると、祈は『ぼくがいなくても大丈夫か』という問いに胸を張って答えた。
――いやいや、お前が一番危なっかしいんだよ。
などと思っていることが、どうやらぼくの顔に出ていたらしい。
祈は小さな眉を眉間にグッと寄せ、両手を腰に当てている。
「だーかーらー、もう。だいじょうぶだよ、パパ!!」
もう一度言い切るそんな祈は、さも当たり前のように美樹ちゃんの隣に立っている。
心配ないと祈は言うが、それでも心配なのは変わりない。
だからぼくは祈の隣にいる美樹ちゃんをチラリと見て、様子をうかがう。
美樹ちゃんの顔色は、出会った頃よりもずっとよくなっているようだ。
……これなら、ぼくがいなくても大丈夫だろうか。
それでも心配なぼくは黒のスーツポケットに入れていた2種類の名刺を取り出すと、美樹ちゃんに手渡した。
ふたつある名刺のうち、ひとつはぼく個人のもので、もうひとつは世話になっているカメラマン派遣会社のものだ。
「美樹ちゃん、何かあったら言って? これ、ぼくの電話番号と、今から向かうことになっている会社の名刺ね」