LOVELY☆ドロップ
話し込んでいるふたりの前で自分の考えに眉をひそめ、思わず唸りそうになってまた我に返った。
ふと右腕に取り付けている腕時計を見ると、約束の時間が迫ってきているのに気づき、ぼくは慌てて口をひらく。
「ここから車でだいたい1時間くらいかな、立派なビルなんだ」
先を急ぐぼくは祈の言葉に補足すると、彼女のふっくらとした頬がまたたく間に風船のように膨れ上がった。
どうやら祈は自分がすべて説明しようと思っていたらしい。
「パパ、はやくおしごといって!!」
挙げ句の果てにぼくは邪魔者扱いだ。
祈はぼくの背中をグイグイ押して、早く出て行けと急かす。
いつもなら、『パパ、パパ』と煩(ウルサ)いくらいなのに、美樹ちゃんが居るとこうなる。
――はいはい、お邪魔虫は退散しますよ。
ぼくは靴箱の上に置いてある小箱から車の鍵を掴み取ると、家を出た。
公共用の廊下にあるちょうど真ん中のエレベーターに乗り込み、1階にある正面玄関を抜けてマンションの裏手に設備されている駐車場へと急ぐ。
目の前の駐車場には5台ほどの車が止められるスペースを設けられており、そこはぼくの車を含め、3台の軽自動車が停まっていた。
一番奥にある青色の軽自動車がぼくの車だ。
ロックを外すと、静かな駐車場にカチリと音が鳴る。
運転席に乗り込もうと体をくぐらせようとしたが、やはり家に残っているふたりが気になる。
ぼくは自分の家がある4階の玄関にあたる公共用廊下を見上げた。
するとそこには先ほど別れた美樹ちゃんが立っていた。