LOVELY☆ドロップ
「おはようございます、日下部(クサカベ)さん」
柄にもなく感傷にひたっていると、不意に受付側から声をかけられた。
にっこり微笑んだのは、背の高いスラリとした体系の女性。
受付担当の山下(ヤマシタ)さんだ。
そんな彼女は腰までの長い黒髪は後ろに束ねられ、そのおかげで目尻は少し上がっている。
清潔感がある彼女はモデルさながらの美人だ。
さすが受付担当だと思えるしっかりした口調だけど、威圧感がない。
そんなしっかり者の彼女といると、ぼくの方が頼りなく見えるのはたまにキズだったりする。
その彼女を採用したのも聡だ。
聡は相変わらず人を見る目がいい。
――だからだろう。
ここで働く人たちは皆優しく、あたたかな雰囲気をしている。
聡とは大学の時からの付き合いで、お互い写真が好きだった。
といっても彼の方は写真を撮るよりも舞台を用意する方が好きで、ぼくはもちろん撮る方が好きだった。
そういうこともあってすっかり意気投合を果たしたぼくは聡と共にこの会社を盛り立てていっている。
といっても、ぼくは陰ながら応援するだけで、聡からの依頼を受けるだけだが――。
聡は根っから人付き合いがうまく、言葉も巧みに操る。
おかげでその能力が買われ、ほんの数年、会社で経験を積んだ彼はあっという間に事業主になった。
しかも、ものすごくやり手の上に人情深いから、たとえ起業してからわずか5年という若い会社であっても、どの企業からも信用され、重宝されていた。