LOVELY☆ドロップ
そんな聡のおかげもあって、子供がいるぼくでも好きな仕事でご飯が食べられる。
彼には感謝してもしきれないくらいだ。
「えっと、金山にご用事ですね。ただ今お呼びします」
山下さんはそう言うと、すぐに二階の事務所である聡に内線を入れる。
だけどぼくは友人であって外来から来たお客さんでもなんでもない。
そして今に限っては、聡はぼくのクライアントでもある。
ぼくから挨拶に行くのが礼儀だ。
ぼくは山下さんに目配せをして、受付カウンターの左にある従業員用の小さなエレベーターがある方向を指さす。
聡がいるその場所へと向かった。
目的地を示すボタンを押せば、エレベーターは高い音を立て、すぐ1階に下りてきた。
中は大人が15人は乗れるスペースだ。
グレーのシックな色遣いを基盤に、地面はブラックを使っている。
とても落ち着きがある雰囲気だ。塵(チリ)ひとつ落ちていない。
きちんと掃除が行き届いていた。
いくら小さなエレベーターだからといっても手を抜かないのはモデルを呼んで撮影するということを考えているからだ。
間もなくしてエレベーターは機械音を立て、目的の場所だと知らせてくれる。
3階にあるそこは社長室に通じる唯一の扉だ。
片手開きの黒塗りされている扉の前に立つと、軽くノックする。
「はい」と中から力強い返事が返ってきたのを合図に、扉を開けた。
目の前に広がるのは大きな窓から見える外の景色だ。
そして、その窓の前には立派な机と、椅子に座った人物がいた。