LOVELY☆ドロップ
ビジネススーツを身につけている体は大柄で、スポーツでもしているのかというくらい体格がいい。
それはおそらく、彼がここを起業する以前に営業部として働いていたことがあったからだろう。
日焼けした色黒の肌はとても健康的で、肩幅も広い。
ベース顔の中にある一重の目はどんな相手でも見透かしてしまうほど鋭く、言葉巧みな大きな口。
そして頑固そうなわし鼻。
襟足までにも届かないくらい短い黒髪がトレードマークになっている彼こそが、ここの社長、金山 聡である。
彼は持ち前の鋭い目でぼくを映すと立ち上がり、右手を差し出して歓迎してくれた。
ぼくも差し伸べられた手を握り、挨拶を交わす。
「やあ、日下部。予定を変更させてしまってすまないな。祈ちゃんは大丈夫か?」
「ああ、今日は代理に頼んできた」
勘が鋭い聡だ。
ぼくがおかしなことを口走れば、きっと美樹ちゃんの身の上もバレてしまうことは間違いない。
それを防ぐため、差し支えのない言葉だけを選び、返事を返す。
――だが、聡はぼくの言葉に太い眉をひそめた。
同時に、握り合っていた手が離れる。
彼はどうやら、ぼくの言葉でもうすでに何かひっかかりを覚えたらしい。
「代理?」
「実はベビーシッターと身の回りの世話をしてもらえる人を雇ったんだ」
これくらいは言っても構わないだろうとそう思い、告げた言葉は、だが聡には腑(フ)に落ちなかったらしい。