LOVELY☆ドロップ
くくっている髪の位置が左右少しズレているのは見なかったことにしてほしい。
これでも多少はうまくなった方なんだ。
少し前までは祈にため息をつかれるほどの腕前だったから……。
それにしても、祈の小さな体が動き回るたび、ゆらゆら揺れる髪は馬のしっぽのようだ。
今もキョロキョロと周りを見回すたびに、ツインテールがひょこひょこ動いている。
「うわ!! さいあく」
松ぼっくりくらいはあるんじゃないかというくらい大きい目がげんなりしているぼくから外の景色へと向けると大きな声でそう言った。
視線の先は灰色の分厚い雲。
「朝は晴れていたから、てっきり晴れだと思ったんだけどな……」
ぼやきながら祈と同じように灰色に染まった空を見上げれば、大粒の雨が大量に降っていた。
「おかしいとおもったのよね。だってパパ、いっつも『おしごと、おしごと』っていってるでしょ? きょうは、ひまだから、おそとにでよっかって、いうんだもんね。
ぜったいこうなるっておもった」
今日のぼくの行動がまるで天変地異の前触れだと言わんばかりだ。
祈はなかなか――いや、かなり辛辣(シンラツ)な物言いをする。
それだけでもけっこうダメージをくらうっていうのに、だけど彼女の攻撃はそれだけでは終わらない。
大きな目だけを動かして、横に立っているぼくをじと目で見てくる始末だ。
けっして器用にくくられたとはいえないツインテールが吹きすさぶ雨風でなびいている。