LOVELY☆ドロップ

テーブルと向かい合っている祈ちゃんはとても嬉しそうだ。

自ら作曲した音楽を鼻歌に乗せてリズムを刻んでいる。


あたしは後ろから聞こえてくるそれをBGM代わりにしてまな板の上で食材を切り、ふたつある内のコンロのひとつに火を点け、フライパンに油を乗せて具材を炒めはじめる。

もうひとつのコンロでは、朝に作った残りものの豆腐と長ネギを入れたお味噌汁を温めなおす。


「……できた」

ガスコンロの火を止め、チャーハンが完成したことを告げた途端、室内にチャイムの音が響いた。

いったい誰だろう?


押し売りか何かかな?


傍にあったタオルで手をふくと、エプロン姿のそのままで玄関の前に立つ。

そんなあたしの後ろでは、祈ちゃんもやって来ている。

どうやら彼女も訪問者が気になるらしい。



ピンポーン。



またチャイムの音が聞こえ、それを合図にドアを開けると明るい陽の光が玄関を包んだ。

明るい背景のその先には、見慣れない女性がいた。

やっぱり押し売りだろうか。

そう思った時、その女性を見た祈ちゃんが満面の笑みを浮かべた。


「あれ? おばあちゃんだ」

――おばあちゃん?

「えっ?」

祈ちゃんの言葉に、あたしは眉をひそめる。


マジマジと目の前にいる女性を見てしまった。


年齢は65歳くらいだろうか。

髪型はショートで、黒髪にところどころ入り交じった白髪はとても綺麗で詮索(センサク)しない限り、いっさい年齢を感じさせない。


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