LOVELY☆ドロップ
チャーハンに入っているウィンナーはもちろん、タコさん型に切ったものだ。
「祈ちゃんはお姉ちゃんが好き?」
そうしてあたしたちは台所にあるテーブルを挟んで向かい合い、座る中、端月さんは目の前に座っている祈ちゃんに尋ねた。
「うん! おねいちゃんは、イノのママになるんだよ?」
祈ちゃんは手にしているフォークでチャーハンの中からタコさんウィンナーを器用に選び出し、小さな口に入れながらそう言った。
えっ!?
いつからそうなったの!?
「まあまあ、そうなの?」
端月さんは大きな目をより大きく輝かせ、身を乗り出して祈ちゃんに尋ねている。
「いえ、違います!」
端月さんはやっぱり潤さんのお母さんだ。
彼女もけっして子供をないがしろにしない。
それどころか、対等に子供と話しをしている。
……のはいいことだと思うんだけどね。
でも、今に限っては鵜呑(ウノミ)みにしないでほしいな。
……だって……。
だってあたしは近いうち、この家から出なければいけない。
あたしのお腹には赤ちゃんがいる。
これ以上、彼らに迷惑をかけることはできない。
「ええっ!? でも、イノがねてるとき、『しゃしん』の中にいるママがそういってたもん!」
祈ちゃんは小さな口を尖(トガ)らせ抗議してくる。
あたしはそんなふたりに挟まれ、なぜか叱られた小学生の気分だ。
でも祈ちゃんのそれは夢だし、現実じゃない。