LOVELY☆ドロップ
ぼくは、彼女にとって赤ちゃんがいることを言うに値しない存在だと思われていたんだ。
ぼくは彼女に裏切られたんだ!!
ぼくの中にある言い知れない感情がふつふつと湧き上がってくるのを感じた。
心の奥底でくすぶっていた炎が少しずつ大きく燃え盛っていくのが自分でもわかった。
彼女のすぐ後ろに立ち、両脇にぶら下がっている手をぎゅっと握れば、彼女が息を詰める雰囲気が伝わってきた。
「だいじょうぶです……あたし、明日から家を探すつもりですから。潤さんにご迷惑はおかけしません」
そう言うと、美樹ちゃんはぼくの方へ振り向き、視線を交えてきた。
その顔は、どこか決意を感じさせるものだった。
――だが、そうじゃない。
ぼくは、美樹ちゃんにそういうことを言ってほしかったわけじゃない。
ぼくが言いたいのは、どうしてもっと早く相談してくれなかったのかということだ。
ぼくが彼女の立場であったなら、おそらくとても苦しかったはずだ。
頼る人間もおらず、こうしてひっそりと考え込み、先が見えない未来に怯えて生活していたはずだ。
ここを出ると決意した今だって、ひとりで生活することに不安を感じているはずなんだ。
それを……なぜ相談しようとしてくれなかった?
「そういうことを言っているんじゃない!!」
大きな口を開けて腹の底から発した言葉は台所中に響いた。
今までこんなに大きな声を出したことがあっただろうか。