LOVELY☆ドロップ
だって、あたしがこの家から出ていけばいいだけの話でしょう?
それなのに、彼はそうじゃないと言う。
慶介のように、あたしを切り捨てるような言い方をしない。
――まるで、あたしが全部打ち明けなかったことを怒っているみたいだ。
だけどどうしてそれで怒るの?
だって、潤さんとあたしは赤の他人。
一緒に暮らしているけれど、それは一時的なもので、永続的じゃない。
だから彼に頼ることはよくないことだ。
最終的には彼から離れ、あたしはこの家から出ていかなければいけない。
そんなことは誰よりもあたしが一番理解している。
それなのに、潤さんの言葉だと、あたしは永続的に傍にいてもいいっていうことにならない?
――ううん、そんなことはありえない。
きっとあたしが自分のいいように解釈しているだけだ。
潤さんは優しいから、黙って見過ごすことができなくて、ただあたしが不安だったことを言わないのを責めているだけだ。
でも……だったら……。
彼はなぜ怒っているの?
「……なあに?」
冷たい空間に不似合いな寝起きのふんわりした声が聞こえて、あたしは、はっと我に返った。
シンクと向き合う体を反転させ、目の前にいる潤さんをあらためて見ると、彼は両手に拳を作り、何かと戦っているように見えた。
――戦っているのはたぶん、赤ちゃんがお腹に宿っていることも言わず、何食わぬ顔をして彼の隣にいたあたしへの苛立ちだろう。