LOVELY☆ドロップ
今のぼくの気持ちとはかけ離れた、のどかな光景が広がっているばかりだった。
腕にはめている時計を見ると、時間は5時20分。
母さんの話によれば、美樹ちゃんは2時30分すぎに家を出たらしい。
ともすれば、彼女はもうとっくの昔にここから移動しているだろう。
時間は夕食時だし、友人とレストランで食事にでも行ったのかもしれない。
そう思うものの、この近辺は大きなビルやら有料の駐車場やらで埋め尽くされ、女の子が行きそうなレストランは見当たらない。
「いったいどこに……」
途方に暮れていると、公園のベンチに座って砂場で遊んでいる子供を見つめる年配の女性の姿が目に入った。
もしかしたらあの女性なら何か知っているかもしれない。
ぼくは祈に少し待っていてとひと声かけ、ドアを閉めてまた走った。
「すみません、ここにスーツ姿の22、3歳くらいの女性を見かけませんでしたか? 誰かと待ち合わせしていたらしいんですが……」
ややふっくらとした女性に近づき、尋ねると、うなずきが返ってきた。
「それなら、黒っぽいスーツを着た子かしら?」
「そうです!」
――ああ、やっぱり美樹ちゃんは母さんに言ったとおりここにいたんだ。
そう思うと少し安心するものの、ぼくの心は一向に安らぎはしない。
それどころか、ぼくの体は先ほどよりも強張り、緊張して固くなっていくのがわかった。