LOVELY☆ドロップ
なぜ、こんなに落ち着かない気分になるのだろうか。
自分に問いかけていると、ベンチに座っている女性が続きを話そうと口を開いた。
「ああ、その子なら、とてもハンサムな男の人と一緒にいたわ。――私ももう少し若かったら……」
ぼんやりつぶやく女性の言葉が、ぼくの体を冷たくさせた。
季節は夏だというのに、まるで体の芯から冷えていくような感覚だ。
ぼくの体から血の気が引いていくのがわかった。
『男の人』
その言葉がぼくの胸に引っかかった。
――というのも、彼女の身の上で関わりあう男性というのが、ぼくの中では『麻生 慶介(アソウ ケイスケ)』しか思い浮かばなかったからだ。
「どこへ……その車はどこに行きましたか!?」
今にも食ってかかりそうな勢いでぼくが問いかけると、女性は公園の出口に当たる道路を示した。
「黒い車に乗ってあっちに行ったわ」
「ありがとうございます!!」
女性に礼を言うと、ぼくはふたたび祈がいる車に飛び乗りエンジンをかけた。
「パパ?」
「こっちだ、急ごう」
眉をひそめる祈にそう言うと、公園の外周を回り、その先に伸びている道路へと車を進める。
くそっ!!
彼女はいったいどこにいるんだ?
そしてぼくはなぜ、彼女がいなくなったことにこんなにも焦っているんだろうか。
自分のこの行動が理解できず、疑問に思いながらも人通りが少ない閑散(カンサン)とした一方通行の道路をそのまま車で移動させること数分の後、ぼくはまたもや車を止めた。