LOVELY☆ドロップ
なぜ赤ちゃんのことを秘密にしていたのかと責められ、あたしと顔を合わすことさえしなくなった。
潤(ジュン)さんはもう、あたしのことを嫌悪している。
そう思うと、胸が押しつぶされそうに痛み出す。
目頭が熱くなり、じんわりと涙があふれ出す。
「美樹、わかってくれるな?」
あたしの目が潤んだことで、慶介は自分の言葉に衝撃を受けたのだと思ったらしい。
彼はますます身を乗り出し、俯(ウツム)いたあたしの耳元でそっとささやきかけてきた。
だけどあたしは慶介の言葉で悲しくなったわけじゃない。
このあふれ出る涙は潤さんというとても素敵な人を想ってのものだ。
だからあたしはこれ以上慶介に誤解されないよう、泣くまいと唇を噛みしめ、静かに首を振った。
一向に首を縦に振らないあたしに、慶介はとうとう癇癪(カンシャク)を起こしたようだ。
ふいに椅子から立ち上がり、テーブルの上に置いた同意書を引っ掴むと、同じようにして反対側の手であたしの腕を引っ張った。
彼はあたしをまるで荷物のように扱い、引きずるようにして部屋から出ると、1階にあるロビーへ向かう。
「ちょっと、なに? 離してよっ!!」
腕があまりにも強く引っ張られるから、その途中にある階段で何度も転びそうになった。
あたしはいったいどこに連れて行かれるんだろう。
不安でいっぱいになり、慶介に掴まれた手首を振りほどこうと体をよじる。